(広義の)芸術作品とは、故意によって美的観点からとらえられるような、任意の知覚的あるいは志向的な対象である。(Beardsley 1970: 43)


Xに関して美的観点を適用することとは、なんであれXが持っているかもしれない美的価値に関心を向けることである。(Beardsley 1970: 43)


Xの美的価値とは、正しくかつ完全に経験されたときに美的満足を与える能力があるゆえにXが持つ価値のことである。(Beardsley 1970: 51)


満足が美的なものであるのは、それが主に、ある複合体全体の形式的統一性、かつ/または領域的質に注目することで得られ、かつ、その大きさが形式的統一性の程度や領域的質の強度と相関しているときである。(Beardsley 1970: 46)


ある対象に関する考慮事項が、美的観点にとって関与的であるのは、それが対象についての事実であり、美的満足の印(形式的統一性と領域的質の強度)が対象にどの程度存在するかに影響するような事実であるとき、かつそのときに限る。(Beardsley 1970: 52)


Beardsley, Monroe C. (1970). The Aesthetic Point of View. Metaphilosophy, 1(1):39-58.

美学者が論じてきた「美的○○」はいろいろある:美的経験[experience]、美的価値[value]、美的楽しみ[enjoyment]、美的充足[satisfaction]、美的対象[objects]、美的概念[concepts]、美的状況[situations]。本稿はあらためて、この「美的なもの」について考える。

1.さまざまな観点

川のほとりに原子力発電所を建設するかどうかをめぐって、自然保護主義者と企業がバトる例。/小説『エクソダス』の出版を拒否る例:「もし歴史として読まれるならばこれは不正確であり、文学として読まれるならば下品である」。/レーニンの発言「ベートーベンの《熱情》には感動するが、〔今日の政況的に〕褒めるわけにはいかない」。

これらいずれの例においても、対立する観点のうち、一方はとりわけ美的な観点である。自然保護主義者、『エクソダス』を「文学として」読むこと、《熱情》に感動するレーニン。

【美的観点の有用性1】論争の調停に役立つ。

建築の古典的基準:有用性[Commodity]、頑丈さ[Firmness]、魅力[Delight]。各基準は独立している。極めて堅牢な古い銀行は頑丈さを持つがほとんど有用性と魅力を持たず、非常に魅力的だが機能的にはまったくだめな建物もあり、使い勝手のよい橋が崩壊することもある。

建物の良し悪しを検討するときには、「強固だから良い」とも言えるし、「醜くて不便だから悪い」とも言える。有用さ、頑丈さ、魅力はそれぞれ独立した美徳であり、それぞれの観点(実用的観点、工学的観点、美的観点)と結びついている。「観点」は、問いを分割することで、論争をより扱いやすくする(“○○な観点から”見た良し悪し)。

翻って「観点」とは、ある種の**良さ〔価値〕**と結びついたものだと言える。対象のうちに、特定の良さを探し求めることが、すなわち特定の観点をとることである。観点は、自分が強調したい一連の事柄に注意を引きつけ、その他の事項を引き離すのに役立つ。

美的観点は橋や音楽や彫刻だけでなく、山や貝殻や虎、ポルノ、ごみ捨て場、殺人事件に対してもとりうる。

【美的観点の有用性2】一般的な「芸術」概念を提供してくれる。

「芸術作品」の定義:(広義の)芸術作品とは、故意によって美的観点からとらえられるような、任意の知覚的あるいは志向的な対象である。

ここでの「とらえる」はめっちゃ広く理解すべき:見ること、聞くこと、読むこと、そしてこれらに準ずる注目の行為だけなく、「展示すること[exhibiting]」、すなわちある対象を選び出し、これらの注目を集めやすい場所に置くこと、あるいは観客としてふるまう人々の前にその対象を提示することをも含む。

2.美的観点、美的価値、美的満足

**「美的観点」の定義:**Xに関して美的観点を適用することとは、なんであれXが持っているかもしれない美的価値に関心を向けることである。

「関心を向ける[taking an interest in]」とは、対象のうちにある種の価値を探し求め、見つかる場合にはそれを利用したりすること。レーニンは《熱情》のうちに美的価値を求め、また、美的価値を見いだせた。出版を拒んだ出版者は『エクソダス』のうちに美的価値を求めたが、見いだせなかった。